ヴィンス・フリン(Vince Flynn)2

 

2018/03/30

 

 

 同氏の作品”Order to Kill”を読了。相変わらず、英語がむつかしくて泣かされるが、彼の表現能力が抜群で、「比類のない」状況描写に驚かされる。ISIS支配地域における若い女性のオークション場面などからすると、この作者はISIS支配地域に潜入してきたのだろうか、とその表現のリアルさに驚かされる。(P221

 

 

 

 ちなみにGoogleISIS woman auctionで検索してみたら、地獄のような映像がたくさん出てきた。

 

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 チャドルを着て顔も露出していないのに、なぜ値段がつけられるか、と言われるだろうが、小説のなかでは

 

 

And on that stage stood a man holding two girls. One was probably sixteen and the other no more than thirteen. Both had been stripped naked and looked nearly catatonic. They’d spent their postadolescent lives covered from head to toe and under the watchful eye of their families. Now everyone they knew was dead and they found themselves exposed and alone. Livestock in a sex slave auction.

 

 

と書かれており、戦争で親という後ろ盾をなくしたあるいはISISによって誘拐された少女たちが性市場で売りに出されている状況を、露骨に描写する。

 

                           注:

Catatonic緊張病性の

Postadolescent: 青春期後の

 

 

 さらに前のホームパージで言及されなかった銃も開示されている。(P310

 

 

 

Kel-Tec P11

 

 

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アメリカ製、小型のセミオートマチック式拳銃

重量:400g

 

 

Ruger SR9

 

 

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アメリカ製、セミオートマティック・ピストル

重量:750g

 

 

Sig Sauer P226

 

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                     Mitch Rappお気に入りのピストル。

                     重量:850g 

 

これらのピストルを使って、Mitch Rappは敵対者の眉間を打ち抜く能力を有するのだという。

 

 

 

現地の兵隊の使用する兵器としてしばしば出てくるのが、

 K-47

 

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ミハイル・カラシニコフが設計し、1949ソビエト連邦軍が制式採用した自動小銃。『世界で最も多く使われた軍用銃』としてギネス世界記録に登録されている、とGoogleは伝える。前にブルガリアのバラ祭り見物に出かけた際、バラ園のほかに存在するのは輸出用兵器生産工場だと説明されて驚いたことがあるが、あのあたりで生産されているのだろうか?

 

 

 アメリカという国はこういう武器が周囲に氾濫し、銃器を一般の銃器店で簡単に買えるようだ。(参考

 

  

 

人身売買にしても武器にしても、日本人がまったく想像もできないような対象であり、こういう観点からすると外国人は非常にガサツな環境で生活しているようだ。人当たりという価値を最優先に考える日本とはまるきり正反対の価値観である。

 

 

こういう非人間的環境のなかでは、犠牲にされるのは食生活だ。

 Vince Flynn”Order to Kill”にも食事に関してわずかな記述がある。

 

 

 

 イラクのAl-Sirquatのオークション会場から競りにかけられていた女性Lalehを奪ってきたMich RappISISのアメリカ人暗殺者であったEric Jesemのアパートメントで食料を探す。彼がキッチンで見つけたのは、壊れたストーブの下に隠されていたアメリカ軍の兵糧MREであり、そのなかにメキシコ鶏肉を見つけて食べる。(P233

 

 

 

 MRE(エムアールイー)は、アメリカ軍が採用している個包装されたレーションMREMeal, Ready-to-Eatの略。1980年代頃からMCIレーション(Cレーション)に取って替わった。

 

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Menu 23: Chicken Pesto Pasta

 

 

これらの記事を読むとアメリカ兵士の食生活の貧困さが手にとるようにわかる。もちろん日本兵も第二次大戦中は食い物すらなかったのであるから、割引して読まないといけないのだが、アフルエント・ソサイアティーである日本に住む現代の日本人にとっては、まさに想像を絶する貧困さである。

 

 

私もサウディ・アラビアに住んだことがある。中近東における現地食の質はまさに最低であって、アメリカの兵士ならずとも現地派遣という重責を敬遠したい気持ちはよくわかる。

  

 

とすれば、高給を対価として受け取る暗殺者はいざ知らず、アメリカ軍の兵士たちはなにを求めて中近東へ赴任するのであろうか、高給がその理由であろうか、それとも世界におけるアメリカのステイタス維持が目的なのだろうか?