福寿園

2020/12/25

 

 12月、暮も押し迫ってきたが、公園には遅く紅葉する楓があって、私たち散歩大好き人間の目を楽しませてくれている。

 

 1225日朝、私はまたもや照湯に出掛けた。照湯については1029日に随分調べたので、もう思い残すところはないのだが、ただ一つ私の心に引っかかっていることがあり、それを調べに、照湯に向かったのである。

 

 

 先日照湯で一風呂浴びたときに、春木川の向こう側に「福寿園」と書いた建物を見つけたのである。

 

画像:GoogleMap,2020から借用。春木川越し左側に福寿園の建物が見える。

 

 わたしにはそれが老人向けの老人ホームであることは分かっていた。

 

 私は今現在が80歳であり、これからますます年寄りになっていくのだから、いずれかの時点で老人ホームのお世話になる時が来る。その時期をなるべく遅くするためには、できるだけ足腰を鍛えておかなければならぬ。そう思い込んでいる私は、今年は蓼科にいるときも、この別府にいるときも、努めて一日2時間歩いて、自分をくたくたになるまでこき使う必要があったのである。

 

 

 そういうことで、いつのことになるか分からぬが、老人ホームというのは、未来予知能力がすこしは備わっている私にとって他人事ではないのであった。

 

 

 そういうことで、今日は春木川を向こう側にわたり、この福寿園を偵察に来たのである。

 

 上の写真を御覧なさい。まわりは温泉の噴気に包まれて、東向きだから朝はとくに日当たりも良く、ぬくぬくとした暖かい雰囲気があって、理想的な老人ホームに見えるではないか。ところで「軽費」とはいったいなにを意味しているのか?

 

 

 左側の道を更に進むと、入り口があった。

 

 

 なかなか美しく手入れされた素敵な建物ではないか。

 

 私は焦げ茶色に塗られた玄関から、この建物のなかに入った。コロナの所為で、「面会謝絶」の措置が取られており、玄関でアルコール消毒液で滅菌化させられ、非接触体温計で体温を計測された。厳重な防疫体制が採られている。ルックス・ナイスである。入口付近には温泉溜めのコンクリート構造物から蒸気が噴き出している。温泉好きの人間にとってはこれもルックス・ナイスである。

 

画像:南立石公園の楓。福寿園ではない。

 

 ここに入れば、温泉はあるし、見晴らしもよいし、退屈すれば、隣の照湯に出掛けることもできる。

 

 

 そこで、応対に出てきて下さった年配のご婦人にまず尋ねた。「空いてますか」と聞いたのだ。答えは即答で「はい、空いてます」ということだった。玄関にあった名札表ですくなくとも二部屋あいていることを、私はすでに観察したあとだった。

 

画像:2020/11/23撮影。坊主地獄も近くにある。

 

 ところがご婦人の説明は驚くべきものだった。彼女はまず、「軽費」の説明から始めたのだ。要点は次の通り。

 

1.       「軽費」とは「安い」ということです。

2.       安いですから、狭いです。一部屋4畳半です。

3.       人生の終わりになって、財産が少なく、年金額も限られている人たちのための施設です。

4.       ですから入居費という頭金がありません。また、毎月の支払額は収入に応じた変動制です。

 

 彼女が差し出してくれた福寿園軽費老ホーム 福寿園 | 社会福祉法人 久住会 (9-10.jp)月額支払い費用は次であった。

 

 

 

 この支払費用をよく観察してください。年間収入額150万円以下の人は月額7万円で、年間収入額が350万円の人は月額17万円になるというのです。つまり、この老人ホームの費用は収入による変動制なのです。同じサービスを受けるのに、貧乏人ほど安くなり、金持ちほど高くなる、という経済合理性に反した価格体系なのです。

 

 私は社会に出てからずっと経済合理性に従って生きてきたので、このシステムを聞いた瞬間、何が何やら分からなかった。高く払えば、good serviceを期待できるが、安ければ、poor serviceで辛抱するのが当たり前。だが、この場所では高く払っても安く払っても、同じサービスだというのがそもそもおかしい。

 

 

 「てやんでえ、なにこきやがんでえ」とそう思った。

 

画像:照湯に飾られていた火男火売神社の絵。幕末。火男火売神社も福寿園からそう遠くない。

 

 あとでよくよく考えてみたら、この事業会社は私たちが当たり前として考えている「利益追求型事業会社」の概念を放棄しているのだとしか考えられない。言葉を変えれば、「そもそも資本主義社会において、利益を追求しない事業が果たして存在するのか」という根本的な問題につきあたる。卑近な問題としては、「税務署はこのような営利団体を黙って見逃すのか」という問題となろう。

 

 

 利益を追求しないのなら、では「どのような価値基準をこの会社はもっているのか」という問題となろう。税法上の建前については、私はまったくの素人で、即答はできかねるのだが、私のおぼろげな推測では、この会社は評価基準を「福祉」に置いているのではないかと思う。物事の評価基準を、資本主義社会の金銭的利益ではなくて、社会主義国の採用する「福祉利益」に置いているのだろう、と感じた。でもはたしてこのような評価基準の違いを日本国は認めているのだろうか。

 

 

 でもこまかいことは別にして、私が漠然として受けていた印象―暖かそうな、居心地がよさそうな場所—という直感的な評価は当たっているかもしれない。

 嘘だと思ったら、一度行ってみてごらんなさい。この世に存在する唯一の暖かい逃避場所のようにみえますけどね。

  

 ちなみに、私の収入を聞いたそのご婦人(多分理事長)は絶句して、「ここはあなたのような人のくるような場所ではありません」だと。

 

 私は目をパチクリさせて帰ってきました。

 

 

 注:参考資料

軽費老人ホームとは│3つのタイプと有料老人ホームとの違いを解説 | いろはにかいご|介護情報サイト(介護施設・資格・ノウハウ) (1682-kaigo.jp)

 

 その晩、私はマンションに帰ってきて、食事を摂り、休んでいたら、屋外でドーン・ドーンと音がする。何事やならんとバルコニーに出てみたら、花火だった。クリスマス・デイに花火を打ち上げるものなのだろうか。私のマンションは下に青山通りが走っているのですが、北浜公園での打ち上げ花火が遠くに見えました。下に動画を載せておきます。

 

            https://youtu.be/3iL7E-7jCQM

                  別府北浜公園での打ち上げ花火 2020/12/25

 

    べっぷクリスマスファンタジア2020 

 

 

 

 

 では皆さま、御機嫌よう。そして年末まで何もなければ、どうぞ良いお年をお迎えください。