2021/12/03
今度の旅行は、出がけに妻の入院という緊急報告があって、私の気持ちがそちらに大きく揺らいでしまった。この旅行記もだから順序もばらばらになり、心の動揺が抑えきれぬ有様を示している。
まだ報告が残っているのは東寺東寺 - Wikipediaだ。
2019年3月に東京国立博物館で東寺講堂の立体曼荼羅の特別展覧会が開催されたようですね。そのとき私は別府に籠っていて、東京に出る気持ちはまったくありませんでした。
しかし、もし知っていてもこの展覧会を見るために東京に出ることはまずなかったであろう。
私が京都大学に在学していたときから、弘法大師が伝えた唐の密教に関する完全な理解者は日本にはいなかったようである。
次の写真は京都大学教授吉川幸次郎の写真であるが、私たちは吉川幸次郎氏のおかげで盛唐の詩人杜甫を学ぶことができた。杜甫については完璧な理解を得たのである。
ところが、優秀な人材の集まる京都大学にも唐の時代の密教を語る学者はいなかった。最澄がいるではないか、という方もおられようが、肝心の最澄も密教の神髄についてはなにも語っていない。つまり、私たちは密教については、全員理解の垣根の外側に隔離されている。だから、たとえば曼荼羅の哲学的理念をかみ砕いて話してくれる人がいないか、と聞いたとしても、日本には答える人が誰もいない。
こういう訳で、そもそも密教という宗教に関しては、日本という国は未熟なのである。
こういう事情が背後にあって、私は東寺を敬遠していた。わざわざ拝観しに行っても、わけの分からない曼荼羅を見物して、その行動に何の意味があるのか、と考えたのである。
今回東寺に来たけれども、この垣根は越えられなかった。
やっぱり駄目だった。東寺に二度とくるものか。
画像:東寺パンフレットから
この日は五重塔初層が御開帳だったので、拝観し、写真を撮ってきました。
詳細は次を見よ。
五重塔の初層内部には、心柱を大日如来に見立て、その周囲の須弥壇上に金剛界四仏の彫像が配され、四仏に二尊づつ従う八大菩薩の彫像が配置されている。さらに、須弥壇四隅の四天柱には金剛界曼荼羅諸像が初層四周の柱には八大竜王図が壁には真言八祖像が描かれている。
引用:五重塔めぐり(江戸以前建立の現存22五重塔) - ●京都 東寺五重塔 (lpsec.net)
画像:東寺ホームページから
不空成就像については上の写真で観察される通りです。須弥壇上に金剛界四仏の彫像が配されているのですが、この四体の仏像のうち、私たちが存じ上げているのは、西方向の阿弥陀如来のみです。宝生、阿悶、不空成就の三如来については存じ上げてはおりません。一体この仏像は何であり、どのようなファンクションをもっているのでしょうか。
このように密教寺院というものは不可思議な諸像で満ちており、理解不可能であり、いままで誰も明快な解説をしてくれる人が出てきてくれていません。
これに引き換え、金堂は明解です。
画像:東寺パンフレットから 薬師如来の下段に十二神将が見える。
問題は講堂です。
これが東寺の講堂なのですが、別名“化け物屋敷”。
画像:東寺パンフレットから
御覧の通り、ごちゃごちゃの有様。たしか仏教はお釈迦様が開祖であり、お釈迦様の教えだったはずなのに、その開祖はどこかに吹っ飛んでしまって、影も形もありません。
二年前の東京国立博物館の国宝展でも、この東寺の立体曼荼羅に関する明解な解説はありませんでした。
つまり、東寺の講堂は仏教の開祖である「釈迦抜き」なのです。これは仏教ではありません。お釈迦様が消されてから作られたひとつの新興宗教であります。
空海や最澄は当時唐で流行していた密教をNouevelle Bouddhismeと受け止めて、釈迦抜き新興宗教の核心を充分玩味せず、そのまま日本に持ち帰ったもののようです。嘘だと思われるなら、中国に行ってみて御覧なさい。現在の中国では、密教という当時の新興宗教は影も形も残ってはいません。
逆に、聖徳太子以来、私たちが仏教の核心としてとらえてきた勝鬘経義疏の「空」の思想(『勝鬘経義疏』の「空智」 (lcv.ne.jp))は、空海によって、この東寺によって、路傍に貶められたという印象が否めません。残念です。日本精神を体現化する法隆寺は、釈迦抜きの東寺により、土足で踏みにじられたのです。憤慨に堪えません。
このあと観智院も拝観したのですが、ちまちましているので、割愛します。
覚えておきましょう。後述の「『勝鬘経義疏』のコア「空智」2」『勝鬘経義疏』のコア「空智」2 - dousan-kawahara ページ! (jimdofree.com)で述べる通り、聖徳太子が説いておられるのは、仏教の開祖釈迦は宗教者ではなくて哲学者であるということです。哲学者は、宗教者のように南無大師遍照金剛などと言って、「個人崇拝」を強要することは決してありません。
PS
宿泊したのは、ホテル京阪 京都八条口
画像:同ホテルHPより
ホテルは京都駅八条口から5分ほど南にさがったところ。新しく建ったホテルで機能的。ピリッとして、シャンとしている。
食堂はないけれど、他はすべてある。大浴場が素敵で気持ちがよいものだから、この晩、私は三回も入浴した。露天風呂もあるし、アイスキャンデーもついている。のびのびできてバンザーイ。
PS2
今回は順序も不揃いで、なんだかいい加減なレポートになっているが、ご容赦ください。
27日の三千院のあと、神戸三宮に出たのだけれど、街の様子がごちゃごちゃしていて面白味がなく、街を散歩する気持ちも消え失せて、駅前の神戸新聞社ビルに入り、8階の食堂街をうろついたら、「築地 孫右衛門」という鮨屋があったので、ここに入った。定食が¥2,500というので、それを注文したら、実に見事に美味しい鮨だった。バンザーイ。にこにこして今回の旅行を締めくくった。本当に美味しいから騙されたと思って食べて御覧なさい。