2024/04/02
私が金剛蔵王大権現を拝観して、ただちに思い起こした歌が一句あります。
「惜しむとて 惜しまれぬべき此の世かな 身を捨ててこそ 身をも助けめ」
西行が出家を決断したときに、取りすがる4歳の娘を縁側から蹴転がしたときの心境です。
B経験に直面すると、地獄の鬼が「死ぬか、死なぬか」と決断を迫ります。そのときは蔵王大権現が貴方を見下ろしているのですから、躊躇してはいけません。そのときは飛び込むのです。飛び込むと助かるのです。
だれでも知っているドイツのゲーテ。彼は(25歳のとき書いた)「若きウエルテルの悩み」のなかで、その時の心境を次のようだと吐露しています。
西行は出家直後に吉野山に来て、蔵王大権現の姿を拝観し、このとき即座に蔵王大権現に帰依したのです。彼はただちに大峰山上に庵を立て、回峰行を二回おこないました。
注:私の経験をお話しましょう。
死が迫ってくる。地獄の鬼が踊り狂う。彼らは「死ね、死ね」と迫ってくる。「死」は澱みというか深みがあって、行く先の情景を提供しない。だから、神経過敏の私は発狂しそうになる。・・・・・・ 人間はこのような状況になると、解決は「死ぬ」ことしかないと考えるものだが、・・・・・・その時に、(死なずに)南無蔵王大権現と唱えるのです。・・・・・・南無蔵王大権現、すなわち「私は蔵王大権現に帰依します」、と唱えるのです。大きな声で叫んだ方が早く決着します。「だから教えてくれ」と叫ぶのです。
この場所が蔵王堂なのです。
叫んでも喚いても、直ぐに結論が出るとは限りません。
まあ、やってごらんなさい。蔵王大権現が現れるまで続けるのです。
間に合わず、亡くなってしまう人もいます。その時の運ですよね。待ったなし。
こういう狂騒的な脈絡のつき難い錯乱状態を続けると、ある日突然に、時空が変化します。「時空が変化する」とは、精神状態が突然ガラリと変わるのです。
私の場合は(坐禅4 - dousan-kawahara ページ! (jimdofree.com)で説明しましたが、)じっと見つめていた田んぼの曼殊沙華の花が陰陽逆転しました。じっと見つめていた対象物の彩りが自然に反するネガに変わっていくのです。
これは自然ではない、と私は考えました。けれども、映像は動かないのです。つまり、これ以上は進めないのです。
この「時空が変化する」時間が5分間ほど続きました。それで私は考えることを止めました。STOP!です。
私はJunsuiB13 (lcv.ne.jp)で書きましたが、ノルウエーの画家ムンクも時空が反転する現象を体験して“Scream”と題した絵を描きました。
この時の空力反転状態を私はBと呼び、こういう経験をB体験と称しているのです。
Bを体験した人たちには共通の現象が現れます。
彼らからは「執着」が消えるのです。人間は、偉くなりたい、金持ちになりたい、有名になりたい、という向上心がありますよね。こういう執着心がどういう訳か、パラリと外れるのです。古語でいえば、開悟ですかね。西行はB体験ののち、直ちに出家しました。世俗のことには興味がなくなったのです。
しかし、彼らからはB体験の前に経験した地獄観を忘れることはできません。西行は出家したあとで、金峯山寺の本堂で怒り狂える金剛蔵王大権現と体面し、意気投合したのです。
こういう意味で私もまた本日金峯山寺で金剛蔵王大権現と会うことが出来、じっくりとお話をすることができたのです。万歳!
画像:日本古典文学大系 84 古今著聞集 岩波書店/東京 1966.3 p93-94
蔵王堂正面階段 動画:https://youtu.be/tJwN6d2-j9c
蔵王堂見物はこれで終了です。これで私の気持ちに収まりがつきました。
蔵王堂前の商店街をしばらく散歩して陀羅尼助を一袋買い、時間制限があるので急いで駐車場に帰りました。
僅か2時間の滞在でしたが、蔵王権現にお会いできて満足しました。