Brad Thor

2018/04/01

 

 Brad Thorという作者の名前は、日本語に翻訳するときは、ブラッドソーになるらしい。ギリシャのAntiparosに住んでいたことがあって、いまでも休暇にアンティパロス島に行くことが多いとWikipediaには書いてあるから、ギリシャ系アメリカ人なのかもしれない。

 

 

 

 アンティパロス島はギリシャ、キクラディス諸島の中にあり、パロス島の西となりの小島。観光資源もなにもない小さな島だから、きわめて貧しい土地のはず。ブラッドソーはこの島に母親か祖母・祖父が住んでいるのかもしれない。

 

 

                            画像:Antiparos. Google Map, 2018。赤い矢印がAntiparos島。

 

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 彼の小説”Use of Force”(「実力行使」)についてはまだ読み始めたばかりだから、なんともいえないけれど、Vince Flynnの使う英語でさんざんに苦しめられてきた私にとっては、標準的な英語であるから嬉しい。アメリカの高校で使う教科書のように標準的だ。

 

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                                       画像:実力行使

 

 

 CIA要員である主人公Scot Harvathは、イタリアのローマで入手したテロリスト情報に基づいて、テロリストHamza Rahimを追いかけて米国にやってきた。CIAはアメリカ国外での活動を対象とするのが基本であるから、Harvathの行動は違法である。だが、このテロ情報をFBIに渡すと時間がかかって、Rahimを取り逃がし、米国内でテロ活動が開始されるおそれがある、だから、違法行為ではあるが、テロリストを発見・逮捕するまでは、Scot Harvathの追跡を認める、というのがCIAの(そしてアメリカ大統領の)秘密方針であった。

 

 そしてHarvathはネバダ州レノ市郊外の集会所でも催されているフェスティバル会場で監視し、会場内で青色の不審なトレーラーを発見し、内部にいた男性を補足しようとしたところ塩素ガス発生装置を投げつけられる。この男を助けにやってきた中近東系の男性と撃ち合いになって、Harvathはこの男がテロ実行者Rahimであると直感した。会場内にはCIAの持ち込んだドローンが稼働しており、その映像からテロ実行者がRahimひとりではなく、三人であることがわかった、結局HarvathRahimを捕まえ、他の一人がもう一人のテロ実行者を捕まえ、あとの一人のテロリストは爆弾を爆発させて逃げ去った。

 

P7)このように目的は達成したのだが、この行動はCIAの隠密行動だったので、Harvath一行は現地警察が到着する前に、会場から撤収した。

 

                  画像CIA 

 

 つまり、テロを防止するために、CIAが米国内で自らの成立規約を破り、秘密裏に非合法的に行動しているのが米国の実態である。このようなCIAの国内行動を隠匿するために、CIAは国内活動用に別会社を設立し、CIA要員は表向きは、この会社に派遣されて、役人としてではなく、私人として米国内の隠密活動を行っている、というのである。つまり、米国はテロリストとの闘いを、戦争状態の一部として捉えるが、米軍が戦うのではなく、CIAが実行している、と理解すればよいのかもしれない。シビリアン・コントロールという概念はこの局面ではほぼ完ぺきに逸脱されている。

 

 

 

 著者はこの仕組みについて詳しく説明している。

 

 この問題の核心に到達するためには、どうしても大統領の暗黙の了解がなければならない。込み入っている。

 

 この基本構造は他の小説、例えばVince Flynnの小説でも同じく説明されているのだが、Brad Thorはこの構造が出来上がるまでの心理構造を次のように平明に表現する。