2018/05/26
画像;七尾港
あと二日で金沢を去ると思うと、どこかまだ見ておかねばならない、という強迫観念が生まれて、それで本日は天気も安定しているので、出かけることにした。
引越の際の掃除にもある程度のめどがついたので、気持ちの余裕もでてきたからでもあり、引越という大事業による心理的な圧力により、過去一週間生じた身体上の不都合もなんとか一定の決着がついてきはじめてきたからでもある。
どんな不都合が生じたかって? 例えば、ある朝起きてみたら、右腕の指が曲がったままになり、指が真っすぐに伸びなくなったことがある。指に力がはいらなくなったのである。これには困った。食事するときにお箸が握れなくなるのである。この症状は今もまだ少し続いていて、今日の昼食の海鮮丼の魚が摘まめなくなって往生した。
また別に、ある昼下がり、ベッドで寝ていたらこむらがえりに襲われ、足の指を曲げて痛みを我慢したのだが、すると、その直後から右足がうまく動かせなくなって、それで右足を引きずるようになってしまったとか。
また、そういう症状の一環なのだろうけれど、便所掃除で便器の下の床を雑巾で拭いていたところ、もちろん両膝を地面につけていたのだが、拭き終わったときに、自分が両足で立ち上がれないことを発見したとか。
妻に相談したら、足の筋肉の力が落ちてしまっているのです。毎朝6:30からNHKのラジオ体操でゆっくりした足の曲げ運動をやっているとこんなことにはならないのですよ、と怒られた。妻は大学時代ゴルフ部に入っていて、事前体操をしっかりやっていたものだから、面白くもない体操をまじめにやる癖がついているのだ。だから、新婚時代から彼女はラジオ体操をなんの苦痛もなくやってのけていた。私はなにかにつけ「考え込み派」であるから、体操をする癖なんてまったくなかった。その差が今頃でてきたのかもしれない。
今日も昼食をとった食堂でベンチに座ることができにくくて往生したし、海鮮丼の魚肉を箸で摘まめなくてこれも往生した。歳はとりたくないものだ。
画像:能登食祭市場 漁師屋 海鮮丼
さて、本日は散歩中、たまたま目の前で止まった北陸鉄道バス金沢駅行に乗って、金沢駅のクロネコヤマトで身の回りの服を東京の自宅に宅配したのだが、9時を少し過ぎてまだ早かったので、いままで考えていては実行に移していなかった七尾に行ってみようではないか、と考えた。
案内所で調べたら、特急は少し前にでたばかりだというので、普通でよいから切符を作ってくれと依頼したら、
行き 金沢/七尾(普通)9:52/11:19
帰り 七尾/金沢(特急)13:31/14:31
という時間の切符を作ってくれた。行きは1時間半というゆるゆるスピード、帰りは1時間という速さであった。
さて、七尾駅の観光案内所で教えを乞うたら、次の地図をくれた。
この街は小さくて、七尾駅から御祓川に沿った大通りを港に向かって進めば、じきに大通り終点の食祭市場に到達する。御祓川は海に直結する川であるから、入江を引き込んだような、海水か清水かわからないが、水をまんまんと湛えた川である。ひょっとするとこの川では海釣りが楽しめるのではなかろうかと思わせるほど水量が多い。
食祭市場まで行く途中で赤い橋があるから、ここを左折すると、一本杉通り商店街に入る。七尾の見どころが集まった通りであるから、ここを歩く。
まず高澤ろうそく店である。
画像:
お店自体が蔵構えでとても美しい。
店内に漂う香の匂いが素晴らしい。店内には昔懐かしい品物がたくさん並べられていて、明治時代にタイム・スリップしたような感覚を覚える。金沢にはこのようなファンタジックな店はない。
次は、乾物店「しら井」である。
建物が素晴らしい。
しら井は乾物屋。今の日本語でいえば、「昆布屋」である。店に一歩足を踏み込むと、きつい昆布の香りが身を包む。これが昔の乾物屋の匂いなのだ。嬉しい匂いなのだ。最近金沢にこの店の支店ができて、東山遊郭街を訪ねる人たちはこの店の前を通るのだが、昔から乾物屋であったわけではないから、昆布の匂いが染付いていない。この意味で七尾の本店は人を夢見心地にさそってくれる名店だ。
巻鰤
画像:
巻鰤を食べやすいようにスライスして真空パックした製品だ。ちなみにパンフレットにはこう書いてある。
能登の巻鰤
一年で最も寒い時期に能登の大敷網で穫られた天然寒鰤を半年の間、熟成した発酵食品です。
能登の海水でつくった塩で〆め、天日干しの稲わらと荒縄で巻き上げました。
手削り昆布
パンフレットには昆布を鉋で削った三種類の製品が載っている。
太白おぼろ昆布
おぼろ昆布(上中央写真:右)
白とろろ昆布(上中央写真:左)
このわた(なまこの腸の塩漬け)
からすみ(ぼらの卵巣)
画像;
などが種々揃えてあって、買い物がとても楽しい。
鳥居醤油店
しら井の対面にあるのが、鳥居醤油店
本当に古い店で、過日アメリカ人醤油愛好家がここで醤油の木樽醸造をTV修業したことで有名。
ついでに、池波正太郎のひと言。
編集部 先生、これはぜひお聞きしたいんですが、日本人が忘れちゃいけない味って、何ですか、ひと言で。
池波 それはもう、米と醤油ですよ。
(池波正太郎『新 私の歳月』講談社 P52)
ここから更に100mほど進んだ左手に
がある。
昔この地方では花嫁が嫁入りするときに、友禅に描いた暖簾を持参したもので、その暖簾のかずかずが陳列されている。明治時代は青色基調の落ち着いた色調で、現代に近づくと極彩色の美しい花嫁暖簾となる。
画像;花嫁のれん館パンフレットから
さて。これで七尾で見るべきところは全て見たことになるので、港の食祭市場へ急ぐ。
能登食祭市場
七尾港の一部を整備して作ったマーケット兼食堂である。本日は土曜日であるからお客が大勢来ていて大賑わいである。二階がレストラン階となっていて、加賀屋と漁師屋というのが入っている。
私は漁師屋というのに入って海鮮丼というのを食べました。なかなか美味しかったですよ。セットのあら汁味噌汁が素敵でした。
タクシーで七尾駅に戻り、13:31発の特急で金沢に帰ってきました。
天気も好く、楽しい小旅行でした。では、皆さま御機嫌よう。