2019/01/28
画像:向陽倶楽部
受付には先日電話でお打合せさせていただいた永野美紀さんがすでに待っておられて、直ちに旭化成についてのビデオ・プレゼンテーションがあり、旭化成延岡工場で作られている製品の説明がありました。
私のような年金生活者が聞いて理解できる簡単なものではなく、ホール効果を利用したスイッチだとか、人工透析に使用する透析コラムだとか、まるで電子科学とか医療機器の工場を見学するような具合です。
中空糸型透析器
プラノバ
ホール素子
原理
ホール素子の応用例
日窒コンツェルンを一代で築いた野口 遵(のぐち したがう)の話からはじまって、上のような最新技術の詳細まで話してくださるのですから、話すほうも大変でしょうが、聞く方も大変。日本の国の成り立ちを初めから聞き取るような気持ちがして、心が引き締まるのをおぼえました。
画像:野口 遵
参考までに申し上げますが、旭化成が見学者に配る小冊子
『旭化成の80年』
というのがありますから、事前に送ってもらって猛勉強しておいたほうが良いと思います。野口 遵という人は図抜けて頭の良い方だとおもいました。1922年(大正11年)VGF社からベンベルグの技術導入を行う際も、野口遵さんがドイツまで直接出向いて交渉なさったのですから、大物ですね。
私が興味をもったベンベルグについて言えば、問題はビスコース人絹から始まるのです。
綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維は人間が神様から授かった繊維として有史以来使っていたのですが、前世紀から人間が創造した繊維、人造繊維が使われはじめました。このあたりの事情はWikipediaレーヨンに詳しく書いてありますので、お読みください。
専門的な話をすると、パルプ、綿、麻などはセルロースという物質からできていて、セルロースが積み重なった状態で天然に存在するのです。
画像:ビスコースの化学式
上段の化学式がセルロースであります。何百ものセルロース分子が水素結合でくっついた状態で存在するのです。これが綿、麻、パルプです。これに苛性ソーダと二硫化炭素CS2を加えますと、溶解してビスコース(下段)となります。このビスコースを希硫酸の中に押し出すと、セルロースにもどります。こうして溶剤でいったん溶かし、細い糸状に整形した繊維をレーヨンと呼ぶのです。
20世紀初頭、まだ合成繊維が出現する前ですが、このレーヨンが「夢の繊維」として爆発的に売れました。三菱レーヨン、東洋レーヨン(東レ)、帝国人絹(帝人)、倉敷レーヨン(クラレ)はいずれも前世紀初頭にレーヨン製造から出発した会社です。
英国ではコートールズですが、現在ロンドンにあるコートールズ美術館を訪ねますと、繊維会社がその当時いかにレーヨンでボロ儲けをしたか、よく分かります。
画像:2012/05/18撮影 コートールズ美術館 ポール・ゴーギャン 「夢」 1897
ゴーギャンが二回目のタヒチ島滞在の際描いた絵。二人の女性のうち一人が子供の眠る揺り籠に手を添えている。これ以上の詳細は下をお読みください。