2021/06/11
本殿の右側、四之御柱を入れ北方向を写した光景である。実に美しい。よく見ると、こぢんまりとした墓地が見える。のんびりとした佇まいが美しい。過密ではなくて余裕がある。墓を建てるのならば、こういう場所が良い。私はそう思った。
自分の墓を建てるという思いはこれまでまったく考えもしなかったのだが、この小さな墓地を見て、急に「自分の墓をここに造ろう」という思いが沸然として湧き上がってきた。ここなら静かに眠れる、という確信が持てたのである。
しかも、上社前宮本殿のあたりから眺める八ヶ岳連峰の眺めは、右側に主峰の赤岳も見えて、まことに雄大だ。
本殿を見終えて坂を下りてくると、前宮水眼(すいが)広場というのが造成されていて、美しい水車が動いている。奥に喫茶室がある。ここで私はアイスコーヒーを飲んだ。受付のおばさんに「ここに墓を作りたいんだが、どうやればいいのだろう」とたずねたら、「この辺りは安国寺ですね。行ってごらんなさい」との返事だった。
前宮の門前から16号線を南東に1km走ったら、安国寺に到着した。ちょっと入り込んだ地形だが、神社(皇大神宮社)と隣り合っている。右側の鐘楼門を潜ると安国禅寺。
古い石仏が右側に整列している。
突然の訪問で先方も驚かれたに違いありませんが、私は住職に墓地の建設希望を伝えた。
住職は直ちに否定された。
なぜできないかというと、あの墓地は安国寺の管理する墓地ではなく、あのあたり、高部集落というんですが、高部集落の地域所有の墓地ですから、当然高部集落の人間でなければ墓をつくることはできません。それに、あの辺りは神域ですから、許可をとるのがとても難しいのです。
安国寺は現在は小さな寺ですが、安国寺が管理する墓地は、ふたつあります。諏訪家の墓地(諏訪市安国寺廟所)と安国寺の代々の墓地の二つです。安国寺の墓地は小さいし、急な崖地にありますから、あなたのようなお年を召した方は登ることもできません。諏訪家の墓地はこの寺の近くにありますが、歴史の紐づけがありますから、新しく諏訪家の墓地に割り込むことも不可能です。
住職に事細かに説明していただきましたが、室町時代、足利尊氏と夢窓国師、臨済宗天竜寺、江戸時代に臨済宗妙心寺派に転じた経緯を聞き、驚きました。しっかりとした歴史があります。いずれは将来、この寺からも、静岡県原村松蔭寺のように臨済宗白隠禅師のような傑僧が輩出することになるのでしょう。
注: 干沢城、安国寺、上社前宮の位置関係
自分の墓の造立ということは、私の心に突然浮かんだ「泡」のような思いつきでしたが、こうやって安国寺の住職に事細かに教えていただいて、心が晴れやかになりました。この地帯の歴史のなかに身をおくことができるようになりました。
安国寺さん、有難うございます。